ただ、名前を呼んで
祖父の声がテレビから聞こえる笑い声に紛れる。
僕はそのいかにもつまらなそうな番組をぼんやりと眺めた。
祖父の言いたいことなら分かってる。「母親には会うなと言っただろ。」って、そういうことだ。
反抗はしたくないけれど、悪い事だとは思えなくて、僕は黙ってしまう。
「まぁ、拓海が大人しく言う事を聞くなんて思ってないけどな。」
呆れたように祖父が笑うので、僕は祖父の顔を覗いた。
「歯向かう気なんてないんだ。だけど僕には会うのを止めることは出来ないよ。」