ただ、名前を呼んで

どうして、とは聞かなかった。

分かってくれてるんだ。
僕の気持ちを。

祖父や祖母はいつだって僕を一人の人間として扱ってくれる。
たくさんの親がその子供にするみたいに、都合を押し付けたり言いくるめたりは決してしない。


「ご飯の用意が出来ましたよ。」


のんびりとした祖母の声で、居間の空気が少し緩んだ。

祖母の雰囲気は周りを和ませる力を持っているって、いつも思う。


「今日の煮物は特に上手に出来たのよ。」


そう言ってニコニコと微笑む祖母の目尻のシワが、どうしようもなく愛しかった。
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