ただ、名前を呼んで

祖母が腕によりをかけた煮物は、やはり美味しかった。

これほど優しい味の料理を食べられる子供は、一体どれくらい居るのだろうか。

僕は恵まれている。

料理上手で、笑うと目尻に優しいシワの出来る祖母が居る。

僕と男同士の目線で接してくれて、強く深い心の祖父も居る。


そんな祖父母に囲まれて美味しい食事をとりながら、僕はまた母を思う。

母なら僕に何を作ってくれただろうか。
もしかしたら、料理は苦手かもしれない。

それでもきっと僕は「美味しい」と言って平らげるだろう。
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