ただ、名前を呼んで
祖母は紅茶に落とした角砂糖が溶けてゆくのを眺めながら言う。
「私は拓ちゃんを止める気はありませんよ。」
「おい、春子……。」
祖父は眉を寄せて複雑な表情を浮かべ、対して祖母は平然としている。
祖母は紅茶に口をつけて唇を潤すと、また言葉を続けた。
「病んで居るのが拓ちゃんだったら?私達だってきっと毎日会いに行くわ。」
祖父は紅茶から立ち上る柔らかな湯気を見つめる。
僕はそんな二人のやりとりをぼんやりと眺めていた。
祖父も祖母も同じ。
僕を愛してくれているんだ。