ただ、名前を呼んで
ユウキ君は僕に指を指して笑う。
指を指された事と笑われたことに若干の不快感を抱く僕。
この頃から少しひねくれた子供だった。
ユウキ君は無邪気に透き通った瞳で僕に言う。
「ちがうよ。あれはボクのママとパパだよ。」
僕は言葉を繋げられなかった。
『ママ』も『パパ』も、僕の知らない言葉だった。
ユウキ君の家から自宅に帰った僕は直ぐさま祖父に聞いたんだ。
「おじいちゃんは、ボクのパパ?それともボクにもママとパパが居るの?」
その時の祖父の困ったようなしかめ顔は今でも覚えてる。