ただ、名前を呼んで

母の両親の強い反対で、手を引かざるを得なくなった。

その当の母の両親は、その後回復の兆しの見えない母の様子に絶望し、滅多に母の元に訪れなくなった。

だけどそれでも祖父や祖母は母に会いに行けずに居るらしい。


話終えた祖父の背中には、何か重たくのしかかる物が見えた気がした。黒くてズシリと重いもの。


「カスミさんの世話をすることで、拓郎の罪を償いたかったんだ。だけどそれすらも出来ない……。」


俯き目を閉じる祖父。
責任感が強い祖父だから、悔しくて仕方ないのだろう。

僕はその横顔を見つめた。
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