ただ、名前を呼んで
・夕日の見送り方
悔しい。
悔しい。
僕は床に額を付けてくぅくぅ泣いた。
祖父は何も言わず蔑むように僕を見下ろし、祖母はその隣で憐れんだ目を向ける。
個室に充満する僕の噛み締める泣き声を貫くように、切なく声が響いた。
「たく!」
驚いた僕は顔を上げる。
祖父母も目を丸くして居た。
母が、悲しく顔を歪ませてベッドの上から僕を見ていたんだ。
母は困ったように眉を寄せて、少し舌足らずに言葉を紡ぐ。
「たく。悲しいの?」