ただ、名前を呼んで
床に手を付いたままの僕と、定まらない視点で歌う母を置いて、祖父母は出て行った。
遠くで「また出直す。」と言う声が聞こえたような気がする。
母は少しだけ表情が豊かになったなぁ。
そんな事を思いながら僕は母を見つめた。
泣き疲れた身体を引きずりながら家路につく。
今日も綺麗な夕焼け空。
なんだか目が離せなくなって、僕は立ち止まって夕日を見つめる。
ゆらゆらと揺れる夕日が少しずつ建物の間に沈んでゆく。