ただ、名前を呼んで

「カスミさんの居る施設に、次は私も一緒に行こう。」


祖父はしっかりとした声でそう言った。その時の祖父の強い瞳は、この先ずっと忘れることがないと思う。


何年もの間遠慮をしていた祖父が戦おうとしてくれているのだ。

この僕のために。

そして、母のために。


祖父から目を離せないで居ると、キュッと手を握られた。

祖母がその皺のある手の平で僕の手を包みこんでいる。


「私も行くわ。たくちゃんや、拓郎のためにも。」
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