ただ、名前を呼んで


ペタペタとスリッパを鳴かせて廊下を渡る。
今日の鳴き声は三人分。

僕と祖父母は母の部屋の前まで来て立ち止まる。


「開けるよ?」


神妙な面持ちの二人の様子を窺うように僕は声をかける。

祖父が重たく頷くと、祖母もそれにならって頷いた。

母方の祖父母が今日来ているかなんて分からないけど、この間と同じ曜日に合わせて来た。


正直、僕は今日あっちの祖父母には会えなくても良いと思っている。

祖父や祖母が母に会ってくれることが、僕は嬉しいから。
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