ただ、名前を呼んで
スッと扉を開ける。
まず僕が部屋に入ると、祖父母は遠慮がちについて来た。
母は窓の外を向いている。何か気になるものでもあるのか、それとも何かを待っているのか。
「お母さん、今日は特別ゲストを連れて来たよ。」
すると母がゆっくりとこちらを向いた。
僕は母が声に反応したことに驚いたけれど、祖父母を見ると僕よりもっと動揺しているのが分かった。
「カスミさん……。」
聞き逃してしまいそうなほど小さい、掠れるような祖母の声。
祖母は泣いていた。