ただ、名前を呼んで
・キオク
記憶というものはとても曖昧で不確かだと思う。
記憶を重ねて、時間が経つにつれ変化することもある。
しかもしょっちゅう記憶を確かめ直さないと、消えてしまうことさえある。
そんな不確かなもののはずなのに、僕らを捕らえてがんじがらめにするくらい、力を持ってるって痛感する。
この頃の母は、失っていたはずの記憶を再び蘇らせている。
いや、失っていたと思っていたのは周りだけで、本当は眠っていただけなのかもしれない。
母の心の深いところで。