ただ、名前を呼んで
僕は堪らず母のベッドに上半身を俯せた。
シーツに顔をうずめて、母の匂いを目一杯吸い込む。
すると僕の頭にふわりと何かが触れた。
初めての感触なのに、ずっと前から知っていたようなそんな感覚。
ゆっくりと顔を上げると、母が僕の頭に手の平を当てていた。
驚いてぽかんとした僕に優しい声が降り注ぐ。
「泣かないで?」
視界がユラユラと滲む。
胸が締め付けられるみたいに痛い。
僕は震える唇を精一杯噛み締めて、不器用に微笑んで見せた。