ただ、名前を呼んで

それからの数日間、僕はまた母に会いに行けずに居る。

どんなに回復していっても、思い出されるのは全て父のことで。

僕を知って貰おうと色んな事を話しても、母は一向に分かってくれなくて。


それでも平気だって思っていたけど、実際僕はそんなに強くない。

父を呼ぶ声を聞きたくない。
父が居ない事実に悲しむ顔も見たくない。

僕を通り越して父を見る瞳も、『たく、たく』って可愛らしく歌う声だって、ただ僕を追い詰める。
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