ただ、名前を呼んで

「今日も行かなかったのか。」


小学校から真っ直ぐ家に帰り、ぼんやりとテレビを眺めていた僕に、祖父が声をかける。

祖父はたいてい家に居る。詳しくは知らないけど、小さな会社を経営してる。

僕はテレビに視線を向けたまま「うん。」と小さく答える。

祖父は僕が食べていたポテチの袋にガサガサを手を入れた。


「何があったんだ?」

「別に、何も。」

「別にってことはないだろう。」


僕だってこんな投げやりな言い方はしたくない。

だけどどうしても上手く言えないんだ。
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