ただ、名前を呼んで
「お母さん、今日は顔色がいいね。」
ふんわりと微笑んだようにも見える優しい目元。
僕のことを認識していないとは知りつつも、その目が好きで僕は笑う。
「今日は道端にタンポポが咲いてたんだよ。摘んでくれば良かったね。」
聞いているのかいないのかさえ、僕には分からない。
だけど僕は毎日色んな事を話すんだ。
祖父が言うには、僕が産まれたのは母が心を病んだ後。つまり、母は僕を知らない。
だけど僕は思うんだ。
知らないのなら、これから知り合えば良いってね。