Love at first sight.
食事を終えて、名残惜しくも彼女を自宅に送る。
アパートの前で車を停めて、降ろす前に彼女に向き直った。
「また…こうして会ってくれないか?」
「あ……」
「もうただの常連客になれそうもない。君をもっと知りたい」
「っ、私……」
「君の一番近くにいたいんだ。俺では…役不足か?」
「…そういう、わけじゃ…なくて…」
「理由を…訊いてもいいか?」
困ったように視線を落とす彼女…言動からは拒絶は見られない。
「まだ…よく、わからなくて……」
「返事は待つ…だから、プライベートでも会ってくれるか?」
次の日程は来週末のパーティーまで未定だが、それでも頷く事で了解を得た。今日の成果…だな。
明日以降はまた店で会える…これまでとは少し、変化した形で。それだけで俺は満足を得て帰路についた。
「有意義な連休だったようですね」
「お陰様でな」
仕事が詰まっていると、今朝は苅谷が自宅まで迎えに来た。後部座席に座る俺にバックミラー越しに話す。
通勤前にフェイバリットに寄らせた。いつものコーヒーをテイクアウトする為に。
「巽か」
「…彼女はどうした」
「奥でフードを用意してる」
仕切戸の向こうを指しながら、慣れた様子でオーダーしたコーヒーとモカラテを機械のように手早く仕上げる様子に思わずムッとする。
「おはようございます」
顔を出した彼女に声を掛けられ、さっきまでの気分が晴れた。しかし手にしたトレイをテーブルに運ぶ姿にまた苛立つ…俺以外の為に彼女自ら運ばせるなど…。
「連休明けでお仕事大変なんですね、頑張って下さいね」
テイクアウトする事に気付いたのか、彼女が微笑んだ。
「ああ…わざわざ秘書が迎えに来たよ」
「そうなんですか。秘書さんの分までなんて…お優しいですね、巽さん」
「たまにはな」
彼女の笑顔を独占出来たら…どれだけいいか…。
ゆっくりしたいと思う俺を叱咤して車に戻る。また苅谷に茶化されながら、俺は二日ぶりの社内に足を踏み入れた。
来週末のパーティーまでに最低一度はゆっくり会いたいと思っていたが、それは叶わなかった。
俺の仕事の都合や彼女が新たなフェイバリットでの資格を得る為の勉強やら講習で、悉く休みは潰れていった。店で会っても彼女は勤務中で、話す機会はほとんどない。
マメに携帯で連絡は取るようにしているが、彼女が勉強中では悪いのでメールがメイン。焦りばかりが募り、俺は苛立ちのあまりタバコの本数は増え、仕事も滞りがちになっていった。
『あんまり連絡出来なくてすいません』
パーティー二日前の夜、彼女から連絡があった。明日は資格取得の為、本社のある他県に行くらしく朝からいないのだと聞かされた。
『夕方には戻れると思うのでちゃんとパーティーには間に合います』
当日は昼から簡単に披露宴が行われる為、朝から準備が必要だった。それを知っていた彼女はわざわざ連絡をくれたのだ。
「資格はとれそうか?」
『出来るだけの事はしたので、後は報われるのを待つだけですね』
「君なら大丈夫だ…絶対に。俺が保証するよ」
『ありがとうございます!頑張って来ますね』
「ああ」
『終わったら…また連絡、してもいいですか?』
「待ってるよ」
『はい…じゃあ…おやすみなさい』
「おやすみ…明日一度も会えないのが淋しいよ」
『…はい、私も…です』
その言葉だけで…俺は明日一日を何とか乗り切れそうだ――。
アパートの前で車を停めて、降ろす前に彼女に向き直った。
「また…こうして会ってくれないか?」
「あ……」
「もうただの常連客になれそうもない。君をもっと知りたい」
「っ、私……」
「君の一番近くにいたいんだ。俺では…役不足か?」
「…そういう、わけじゃ…なくて…」
「理由を…訊いてもいいか?」
困ったように視線を落とす彼女…言動からは拒絶は見られない。
「まだ…よく、わからなくて……」
「返事は待つ…だから、プライベートでも会ってくれるか?」
次の日程は来週末のパーティーまで未定だが、それでも頷く事で了解を得た。今日の成果…だな。
明日以降はまた店で会える…これまでとは少し、変化した形で。それだけで俺は満足を得て帰路についた。
「有意義な連休だったようですね」
「お陰様でな」
仕事が詰まっていると、今朝は苅谷が自宅まで迎えに来た。後部座席に座る俺にバックミラー越しに話す。
通勤前にフェイバリットに寄らせた。いつものコーヒーをテイクアウトする為に。
「巽か」
「…彼女はどうした」
「奥でフードを用意してる」
仕切戸の向こうを指しながら、慣れた様子でオーダーしたコーヒーとモカラテを機械のように手早く仕上げる様子に思わずムッとする。
「おはようございます」
顔を出した彼女に声を掛けられ、さっきまでの気分が晴れた。しかし手にしたトレイをテーブルに運ぶ姿にまた苛立つ…俺以外の為に彼女自ら運ばせるなど…。
「連休明けでお仕事大変なんですね、頑張って下さいね」
テイクアウトする事に気付いたのか、彼女が微笑んだ。
「ああ…わざわざ秘書が迎えに来たよ」
「そうなんですか。秘書さんの分までなんて…お優しいですね、巽さん」
「たまにはな」
彼女の笑顔を独占出来たら…どれだけいいか…。
ゆっくりしたいと思う俺を叱咤して車に戻る。また苅谷に茶化されながら、俺は二日ぶりの社内に足を踏み入れた。
来週末のパーティーまでに最低一度はゆっくり会いたいと思っていたが、それは叶わなかった。
俺の仕事の都合や彼女が新たなフェイバリットでの資格を得る為の勉強やら講習で、悉く休みは潰れていった。店で会っても彼女は勤務中で、話す機会はほとんどない。
マメに携帯で連絡は取るようにしているが、彼女が勉強中では悪いのでメールがメイン。焦りばかりが募り、俺は苛立ちのあまりタバコの本数は増え、仕事も滞りがちになっていった。
『あんまり連絡出来なくてすいません』
パーティー二日前の夜、彼女から連絡があった。明日は資格取得の為、本社のある他県に行くらしく朝からいないのだと聞かされた。
『夕方には戻れると思うのでちゃんとパーティーには間に合います』
当日は昼から簡単に披露宴が行われる為、朝から準備が必要だった。それを知っていた彼女はわざわざ連絡をくれたのだ。
「資格はとれそうか?」
『出来るだけの事はしたので、後は報われるのを待つだけですね』
「君なら大丈夫だ…絶対に。俺が保証するよ」
『ありがとうございます!頑張って来ますね』
「ああ」
『終わったら…また連絡、してもいいですか?』
「待ってるよ」
『はい…じゃあ…おやすみなさい』
「おやすみ…明日一度も会えないのが淋しいよ」
『…はい、私も…です』
その言葉だけで…俺は明日一日を何とか乗り切れそうだ――。