Love at first sight.
3
夜景を堪能した帰り道、創作イタリアンの店に寄って夕食にした。ここでは揉め事を避ける為に前もって任せてくれと告げる。
「ちゃんとお礼はさせて下さいね?」
困ったようにはにかむ彼女に勿論だと言えば、漸く笑顔が戻る。食事と彼女の笑顔を堪能する。少しずつだが彼女を理解しかけているせいか、ランチと違い味覚ははっきりしていた。
【おいしいっ】
素直で飾らないそれだけの言葉がこんなにまで俺を浮かれさせる。単純な男にしてしまう…。何て事だ……。こんな恋は…初めてだ。
「ご馳走様でした。ホントおいしかったです」
「喜んでもらえてよかったよ」
帰りの車内でも彼女とは会話が弾む。異動前勤めていた店の話や俺の会社の話…こんな事で穏やかにもなれた。
「あ、そのアパートです」
新築らしい二階建てアパートの二階の角が彼女の部屋らしい。
「ありがとうございました、すごく楽しかったです」
このままではこれきりになる…きっとお礼はフェイバリットで受ける事になるだろう。これきりになどしたくない…もっと接点を持っていたい…。
車を降りる為に差し出した手に、彼女の手を重ねられた瞬間…その手をぎゅっと握り返していた。
「巽さん?」
「よければ…明日も付き合ってくれないか?」
「え?」
「予定がなければ…の話だが……」
驚いた彼女を後目に続ける。
「明日は完全に俺に任せて欲しい。今夜は君の為のデートを計画する楽しみを俺にくれないか?」
「あ…」
「俺とは…嫌?」
「そっ…そんな事…ないです、けど……」
俯いて小さく呟いた言葉を…俺は聞き逃さなかった。
「何か…そんなの夢、みたいで…」
「…それを現実にしてみないか?明日の朝、十時に必ず迎えに来る…」
「巽さ……」
「だから君も待っていてくれないか?」
彼女はまた恥ずかしそうにはにかんで、是と答えた。
彼女と携帯の番号やメアドを交換して、彼女に見送られて帰路につく。今が名残惜しくもあり、明日が楽しみでもある。
これからも彼女とは店以外での接点を持ち続けたい。そうする為には何が必要だ?
彼女はそこいらの女共とは違う…彼女が喜ぶ場所、喜ぶもの……今日一日だけではまだ把握しきれていない…。
自宅に戻り、ザッとシャワーを浴びて、ラップトップを立ち上げる。会社関連のメールや添付書類を確認し、苅谷に返信すれば、さすが敏腕秘書…すぐに書斎の子機が鳴る。
『彼女とのデートは如何でしたか?』
「…木下か」
『可愛い従業員がスケコマシの毒牙にかからないように見張れ…と、朝早くに連絡がありましたから』
「誰がスケコマシだ」
『まぁそのご様子では巧くいった…と言う事ですね』
「……ああ…夢かと思うほどな」
『…リアリストな社長にしては珍しく謙遜したご意見ですね』
「まるで俺が傲慢みたいな言い種だな」
珍しく驚いたような苅谷の口調…俺自身ですら驚いているから当たり前の事かもしれないが。
『…誰にでも出会うべくして出会う相手が一生に一人、いると言いますし。起こる事も全ては必然です。誰かが決めるのではなく自身の成長がそれを決めるのですから』
「…お前は敬虔なクリスチャンだったか?」
『いいえ、完璧な無神論者です』
「まるでクリスチャンの台詞だな。神だと言わないだけで」
『持論ですよ。全ては必然ですが、価値を見出すのは己のみにしか出来ません』
「そうだな……」
苅谷の持論だと言う言葉が、自然と彼女に繋がった。
それからは今日の社内での話や今後のスケジュールの話だった。
『来週末、及川商事副社長の結婚披露パーティーがあります。予定しておいて下さい』
「確か及川の弟だったか?」
『はい。お相手は社長もご存知の東雲初音さんです』
「東雲?アイツが結婚?お前と同期だったな」
『はい』
「ちゃんとお礼はさせて下さいね?」
困ったようにはにかむ彼女に勿論だと言えば、漸く笑顔が戻る。食事と彼女の笑顔を堪能する。少しずつだが彼女を理解しかけているせいか、ランチと違い味覚ははっきりしていた。
【おいしいっ】
素直で飾らないそれだけの言葉がこんなにまで俺を浮かれさせる。単純な男にしてしまう…。何て事だ……。こんな恋は…初めてだ。
「ご馳走様でした。ホントおいしかったです」
「喜んでもらえてよかったよ」
帰りの車内でも彼女とは会話が弾む。異動前勤めていた店の話や俺の会社の話…こんな事で穏やかにもなれた。
「あ、そのアパートです」
新築らしい二階建てアパートの二階の角が彼女の部屋らしい。
「ありがとうございました、すごく楽しかったです」
このままではこれきりになる…きっとお礼はフェイバリットで受ける事になるだろう。これきりになどしたくない…もっと接点を持っていたい…。
車を降りる為に差し出した手に、彼女の手を重ねられた瞬間…その手をぎゅっと握り返していた。
「巽さん?」
「よければ…明日も付き合ってくれないか?」
「え?」
「予定がなければ…の話だが……」
驚いた彼女を後目に続ける。
「明日は完全に俺に任せて欲しい。今夜は君の為のデートを計画する楽しみを俺にくれないか?」
「あ…」
「俺とは…嫌?」
「そっ…そんな事…ないです、けど……」
俯いて小さく呟いた言葉を…俺は聞き逃さなかった。
「何か…そんなの夢、みたいで…」
「…それを現実にしてみないか?明日の朝、十時に必ず迎えに来る…」
「巽さ……」
「だから君も待っていてくれないか?」
彼女はまた恥ずかしそうにはにかんで、是と答えた。
彼女と携帯の番号やメアドを交換して、彼女に見送られて帰路につく。今が名残惜しくもあり、明日が楽しみでもある。
これからも彼女とは店以外での接点を持ち続けたい。そうする為には何が必要だ?
彼女はそこいらの女共とは違う…彼女が喜ぶ場所、喜ぶもの……今日一日だけではまだ把握しきれていない…。
自宅に戻り、ザッとシャワーを浴びて、ラップトップを立ち上げる。会社関連のメールや添付書類を確認し、苅谷に返信すれば、さすが敏腕秘書…すぐに書斎の子機が鳴る。
『彼女とのデートは如何でしたか?』
「…木下か」
『可愛い従業員がスケコマシの毒牙にかからないように見張れ…と、朝早くに連絡がありましたから』
「誰がスケコマシだ」
『まぁそのご様子では巧くいった…と言う事ですね』
「……ああ…夢かと思うほどな」
『…リアリストな社長にしては珍しく謙遜したご意見ですね』
「まるで俺が傲慢みたいな言い種だな」
珍しく驚いたような苅谷の口調…俺自身ですら驚いているから当たり前の事かもしれないが。
『…誰にでも出会うべくして出会う相手が一生に一人、いると言いますし。起こる事も全ては必然です。誰かが決めるのではなく自身の成長がそれを決めるのですから』
「…お前は敬虔なクリスチャンだったか?」
『いいえ、完璧な無神論者です』
「まるでクリスチャンの台詞だな。神だと言わないだけで」
『持論ですよ。全ては必然ですが、価値を見出すのは己のみにしか出来ません』
「そうだな……」
苅谷の持論だと言う言葉が、自然と彼女に繋がった。
それからは今日の社内での話や今後のスケジュールの話だった。
『来週末、及川商事副社長の結婚披露パーティーがあります。予定しておいて下さい』
「確か及川の弟だったか?」
『はい。お相手は社長もご存知の東雲初音さんです』
「東雲?アイツが結婚?お前と同期だったな」
『はい』