君といた夏
「愁くんがいなかったら、私はきっと、もう生きてないかもしれないね。」
愁くんは、私のヒーローだったんだよ。
「そんなことが、あったなんて……」
千夏の震える声がして、振り向けば。
千夏の目から涙がこぼれていた。
「何を言っても、同情みたいになっちゃうから……何もいいたくないよ…」
千夏は泣いてくれた。
それだけで、十分だよ。
「玲奈……」
上から声がして、顔をあげる。
涼の悔しそうな表情が目に映った。
「二度とそんなことさせねぇよ……。
俺の玲奈を、傷つけさせねぇ。」
こんなにも、心配してくれる人がいる。
こんなにも、私を思ってくれる人がいる。
「今の私は、幸せだよ。」