君といた夏
わざと、涼の前で私を転ばせたんだ……
涼に呼ばれた嬉しさが、悔しみと悲しみと羞恥心に変わる。
もともと、鈍臭い私。
運動自体は不得意ではないのだけど、何もないところで転ぶし、よく歩いていると電柱にぶつかる。
そういう時は涼が助けてくれるんだ。
でも、今のはきっと、少し離れた位置にいる涼からは私が勝手に転んだようにしか見えていないはず。
自分が情けない。
「大丈夫か?」
優しい声がして、顔をあげると……
「涼……。」
心配そうな涼がいた。
「うん、大丈夫。」
差し出された、涼の手を握るけど……一行に立てない私。