君といた夏
それが、たまらなく怖いから。
私は、彼への一歩を踏み出せない。
「そうかい。兄ちゃん、頑張れよ!」
「うっす!絶対に惚れさせてみせます。」
「よし、その意気だ!」
彼は、ヨーヨー釣りの屋台のおじさんと笑い合うと、
私を引っ張った。
「やべぇ!時間がねぇよ。」
なにを急いでいるのか、彼は腕時計を気にしながらも、私の手を優しく引っ張る。
そんな優しさが、愛おしい。
「ここが穴場なんだよな〜…」
会場から、そう離れていない小さな丘の公園。
私と彼以外ーー誰もいない。
彼の声を合図に、夜空を花火が彩り始めた。