君といた夏



「……ちっ…」



ウザい。



今ほどこいつにイラついたことはない。



理由は簡単だ。


こいつ、野々崎 日向は、俺のファンクラブの会長らしい。



ただでさえファンクラブの存在にキレテるっつうのに、タイミング悪ぃな。




「あー、そういえば、さっき玲奈ちゃん見たよ?」



「はぁ?」



だからどうしたっていうんだよ。



てめぇが玲奈の名前を口に出してるんじゃねぇよ。




「五十嵐くんに抱きしめられてたけど、いいの?」



うるせぇよ。



「そんなわけ、ねぇだろ。」



「本当に?」



『当たり前だろ』


その言葉を、俺は口に出せなかった。



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