ニセ×カレ
「迷子ではないけど…。」

「そうなんだ…。こんな田舎に用事ですか?」

「ま、まぁな。ちょっとじいちゃんのところ行くんだ。」


俺のじいちゃんはこんなところに住んでいるどころか、もうこの世にはいない。


「そうなんですね。」

「そうそう。ちょっと特注で作ってたボールがあってな。」

「特注? ボール?」

「おう、サッカーボール。」


なぜボールを特注なんて口走ってしまったんだろう。


「ヘぇ、サッカーやってるんだぁ…。私の幼なじみもサッカーやってて、南中学行くんですよ。
その子、この辺じゃ『天才』って呼ばれるほどで!

素人が見ても分かるくらい上手なんですよ。」


そんなやつがこの辺にもいたんだな。

久しぶりにちゃんと張り合えるやつが出来たぜ。


と、内心嬉しく思っていた。


「また、学校で会えるのが楽しみですね!」

「そ、そうだな。」


この時の割れんばかりの満面の笑みを一生忘れないだろう。


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