ヴェルセント(1)
━━━…誰だろう。
ココに居るハズの無い香りがする。
それはとても奇妙な出来事。
けれどその香りを辿り、近づけば近づく程。
私の間違いな気がしてきた。
だってこの香りは“あの人達”とは似ているけど違う匂いがする。
『嘘…』
日差しを照り返すせせらぎは眩しいくらいに輝いていて、
その近くに2つの色を持つ男の子2人が倒れていた。
『え、ヤダ。
…誰の悪戯よコレ。』
私の知っている“あの人達”とそっくりな2色の髪色に、私は自分の目を疑うしかなかった。
恐る恐る。
そんな言葉が合っている。
“あの人達”にソックリな髪色をもつ倒れた男の子。
もしかしたら、とか期待までしちゃう。
せせらぎが見せた目の錯覚かもしれない。
そして確認したさに、恐いもの見たさに彼等の頭元まで来てみたが、確認する勇気が出てこない。
「おーいお嬢ちゃん。
弱った俺らを助けてくれねえの?」
『っ!』
青い髪を持つ彼の声が荒々しく、そして力強く私の胸を鷲掴んだ。
私の知っている彼の声質にソックリ過ぎて言葉にならい驚きをしてしまった。
「よっこらせ、と。」
グラリ、気怠そうに立ち上がった青髪の彼の姿に思わず顔を顰めてしまった。
元は白地の綺麗な“アルセント国”の正服なハズ。
それが目の前にいる彼の正服と言ったら……
『破廉恥な姿して何してたのよ。』
上半身も下半身も何かに襲われたかの様に切り裂かれたような無様なモノになっていた。
冷やかな声色で青髪の彼に言葉を投げかけ、
私はもうまだ倒れたままの赤髪の顔を覗き込んだ。
「別になりたくてセクシーな格好してるわけじゃー無いんだけどな。」
私の頭上からクツクツと笑う青髪の声色に少しホッとした。
それは私が知っている彼とは全く異なった声色だったからだ。
赤髪の彼の額に手を置き、
少し自分の“特別な力”を送り込む。
「お~い」
赤髪の彼の姿も同じようにボロ雑巾のようになり、所々なぜだか焦げ付いた箇所もある。
「お嬢ちゃーん?」
『さっきから五月蝿いなあ!少しぐらい黙っててよ!』
送り込む技術は果てしなく難しくて、集中しなきゃ出来ない。
なのに青髪の彼はずっと1人で私に言葉を投げ掛けていた。
「うっ…、」
小さく苦しそうな声を発した赤髪の彼は辛そうに顔を歪めている。
丁度良いや。
あの臭い自分では絶対に飲みたくなかった鍋の中身をこの2人飲ませようと考えた。
『ねえ、この人おぶってついて来て』
ゆっくりと立ち上がり、
彼らに背を向けて早足で自分の小屋へと向かう。
まだ確かめてない。
彼等の“眼の色”を……━━━━━━。