ヴェルセント(1)
目に飛び込んできた光景にクラリ、目眩。
「随分、小さなベッドでギュウギュウだぜ」
ニヤリ、怪しくも艶っぽく笑んだ青髪の彼は何故か赤髪の彼を腕枕し、
自由な左手でポンポンと赤髪の彼の胸を優しく叩いていた。
『誰も一緒に寝てなんて言ってないでしょ?!』
「やあっと見たねえお嬢ちゃん」
青髪の彼の言葉に、眼に私はハッと息を飲んだ。
━━━…深海の青。
見間違えるハズのないその色に目を逸らせないでいる。
「ん~?見惚れたか?」
彼の声で直ぐに現実に戻った。
『はあ。』
私の知っている彼は女の子に気安く声を掛けるような男の人じゃなかった。
顔だって髪色と眼の色が一緒で、似てるのか似てないのか全く分からない。
目の前の彼と私の知ってる人が違い過ぎる性格に溜め息しか出なかった。
『これ、臭いけど効き目はあるから飲んでみて。』
家の中央にあるテーブルに臭味汁を置いて、私は椅子に腰掛けた。
「なんだこれ?」
露骨に嫌な顔をしてソレ、臭味汁を覗いてくる。
そりゃあ私だって嫌だけどさ。
だけどそこまで嫌な顔する必要って無くない?
『栄養ドリンクだけど、少しは傷の回復が見込めると思うんだけど。』
私は何故かぶっきらぼうに答えた。
私の好きな色を持った彼。
会ったばかりだし言葉だってそう交わしてないけど。
何をそうさせるのかは分からないが、嫌な気分にさせられる。
「なあ~んでこんな悪臭漂うの作ってたんだよ?」
『ん?ああ、明日ココとバイバイして旅にでも出ようかな、て思ってて。
それで少しでも何かしら口にするの無いと駄目かな?って思って作ってたの。』
「へえ~…。」
私の頭上から降り注ぐ声はヤケに柔らかで、ヤケに冷めたものだった。
『あの、さ。』
そんな冷めた声に私は怖気づき、言葉が上手くでず。
“あの人達”じゃないと分かったからか少し落ち着きを取り戻した私は気になったことが出て来てしまい、
それを聞くために言葉を続けるしかなかった。
『どうやってココに入ってきたの?』
「………。」
ゆっくりと顔を上げ、その深海の青をジッと見つめる。
ココは外界との接触を避ける為、私は確かに封印をした。
ココの森は深く広い。
でもそれは森の一部を切り取るようにして、作ったもの。
ココには来れないように違う場所へと転送するようにやったハズ。
なのに何で彼ら2人は小川に倒れ込んでいたのか。
それもこんなにボロボロで。
『ねえ。
どうして入って来れた?』
自然と低くなる声とキツくなる目付き。
そんな私の目を彼は決して逸らしはしなかった。
ああ。
そんな所はあの人と被ってしまう。