ヴェルセント(1)
『因みに!』
荷造りする手元を止め、
キッと2人を視野に入れて睨んだ先は青髪の彼。
『ここは明日の朝に燃やすから!!』
「「…………」」
なんだその豆鉄砲をくらったような顔は。
『私はアンタたちと一緒の場所を目指す必要性があることは間違いなさそうだからね。
呼び名だけ教えて。』
けれど私は投げやり半分に言葉を発し続ける。
『私は名無しなんで好きに呼んで。』
じゃなきゃ彼等のペースに巻き込まれてしまいそうになるから。
『2人は一応、客人だからこの小屋で寝て。
私は外で寝るから。』
全くもって嫌になる。
この2人が後継者なら“あの人達”はもうジジイなんじゃないかと思うと、
その容姿が全く想像出来ず、
少なからず会うことを楽しみにしてしまう。
「は?オメエ馬鹿か?!
女が外って聞いたことねえよ?」
急に素っ頓狂な声で私に物申したのは青髪の彼だった。
『ココは外も私の家なの!
さっきの話し聞いてた?!』
「聞いてはいたが、そんでも良い気分しねえだろーが。
それによお。
仮にオメエが俺らと同じ行き先ってどうゆうことだよ。」
『うるさーい!!
怪我人は黙って寝てろ!!』
「…はあ。」
いちいち聞いてくる青髪の彼を怒鳴れば、
諦めたかのように溜め息を溢した。
「君は名無しだと言ってたけど…それってどうゆうこと?」
私と青髪の会話を聞いていただけの赤髪の彼が口を開く。
だけどソレってどうなんだろうと思う。
『私の質問には答えない人に何で私の事を話さなきゃならないの?』
腕を組んでそっぽ向けばもう空は夕暮れ時。
あんだけ青かった空も真っ赤に燃える太陽でオレンジがかっている。