ヴェルセント(1)
この子達は何の為に自分が後継者だってことを隠したがるんだろう?
私が外界との接触を拒み、
少し休んでいる間に何か変化でもあったのかな?
沢山の疑問が浮かぶも今の外界を全く見てない私には結局、分からないことだらけ。
『シリナス?』
「ん〜?」
『アンタ強いね。』
“自分の役目”を果たすのは今度で2度目になるけど慣れない。
と、いうより慣れたくない。
『それよりアンタ達のその傷はどうしたの?』
後継者が2人揃って傷だらけなんて笑えない。
なんなら今頃2人を皆、死に物狂いで探しているに違いない。
「どうもこうもアイツと2人で愛の逃避行を考えてたんだけどよー。
失敗してこーなっちまったんだよね~。」
ヘラリ、気が抜ける笑みを返してきたシリナスの口振りはどうやら冗談みたい。
『いいね〜逃避行!』
よいしょ、と腰を下ろせば自然とシリナスが左隣にいる。
シリナスと少し距離はあるが、
こんな近くに人を感じるのはとても久しぶりな私。
何故か今更になって興奮が高まってきた。
『ふっはっはっはっは!!!』
「おいおいおい。
お嬢ちゃん今度はどーしたんだよ?」
『今更だけど大興奮してきたよシリナスくん!』
興奮してきた私の口からは不気味な笑い声と、変な言葉しかでやしなかった。
「なーににだよー。
オメエは急に何に大興奮しちゃってんだよ?」
『知らん!』
「………。」
手を腰にあててニイッと歯を見せて笑うも、
シリナスは冷ややかな目で私を見るだけ。
何の言葉も返してくれないこの沈黙。
―――…チリン、
何処からか鈴の音が聞こえてきた。