ヴェルセント(1)
不気味なお茶会
青々と広がる空には立体型の白い雲がふんわり、浮いている。
少し暖かな風と共に赤い鳥が気持ち良さそうに飛んでいて、
なんとも優雅な景色。
しかし、だ。
『なあんでオメエがいんだよー?
俺すげえ吃驚なんだけど』
優雅な景色の下(モト)は手入れされた芝生がドコまでも続く綺麗な庭園が広がっていた。
入って来たはずの門はここからじゃ見えない程に遠く、
敷地内にある建物までもが小さく見える。
馬鹿デカイ。
「ふふ、僕だって君と同じ心境だよ」
柔らかな笑みを浮かべた俺と同い年の男が俺の目の前に居る。
居るというか真っ白な石のテーブルと椅子があるテラスに相席させられている。
と、言った方が正しいのかもしれねえ。
ゆったりと目の前の男から視線を落とし、
俺はテーブルの上に用意された同系色のティーカップに手を伸ばす。
「ところで“アルセントの国”はどうですか?」
ホント何なんだってんだよ。
予想外の人物と予想外なお茶会って。
こんな状況下で投げ掛けられた言葉に少なからず俺は動揺し、
―――…カチャン、
何食わぬ顔でティーカップを元に戻せば、食器具の重なりあった音が俺の心情を物語った。
生け簀かねえ野郎だねえ…。
顰めっ面になりたいのを我慢し、ティーカップから視線を上げればぶつかる“赤い眼”。
深みのある赤は俺を見据える。
柔らかく細めた目元の奥で。