ヴェルセント(1)



「すっげえー…」



シリナスは目を微かに丸くし、青の眼が光りでキラキラと反射させた。



『鈴光虫(リンコウチュウ)?』



あのオレンジに染まっていた空がいつの間にか透き通った紺色に変わっていた。



淡くも黄色い光を放ちながら、



―――…チリン、



フワフワと綿毛の様に宙を飛ぶその虫が鈴光虫。



鈴の音が何とも言えない儚さと心地よさを私に与えてくれた。



「鈴光虫って言うのか?」



私の方を見てきたシリナスは何故か驚いた顔をしている。



『そうだけど見たこと無かったの?』



昔は夜になると綺麗な川と澄んだ空気のある土地には必ず鈴光虫がいたけど、



シリナスの反応を見ていたら今は珍しいみたい。




「まあな…」



ゆっくりと目蓋を閉じ、


鈴光虫の群れへと目蓋を開く。



その独特なゆったりとした動きは瞬きという自然な動作だが、



シリナスがやればとても色っぽい。



少し日に焼けた肌は程よい白さ。


横から見ているからか鼻筋は通っているし、唇は薄い。



長身のせいか手足は長く、


右足を立て、
右手をその膝に置いている。


左足はそのまま真っ直ぐ伸ばし、


左手は体重を乗せるように少し後ろに手をついている。



『アンタなんだろ…エロイわね。』



普通にしているんだろうけどシリナスの動作や雰囲気はどうしようもなく色っぽい。



「ん〜?」



とぼけた様な声で私を流し目で見てきたシリナス。



ああ、ホントこんな色気をだせるなんて…


一体この子の歳はいくつなのさ。



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