ヴェルセント(1)
彼等の姿は昨日のまま、切り裂かれたままの正装に身に纏っている。
正装着てる人と歩くのもただでさえ目立つのに、
それが切り裂かれたボロボロの格好だったら尚更、嫌な目立ち方してしまう。
それに一緒に居る私は絶対、捕まって何やかんや尋問されたり疑われる。
『お願いだから服をどうにか出来ないかな?』
「ああ、確かにこりゃーみっともねえな…」
シリナスは私の言葉に気付いて後ろ髪をワシャワシャと乱暴に掻きあげた。
「僕も確かにこんな格好を皆に見られたくないよ。」
ギランダは早速といったようにキラキラ赤く光る粉末で自分の身を覆いだした。
魔法を使うとき、
そして魔術だと元の魔法使いの色が絶対に出てくる。
それは家紋を表すようなものである。
ギランダは赤。
やっぱり赤。
そして魔術ではなく、
魔法を使ったことをハッキリ目の当たりにした私はギランダが後継者だということを明確にさせた。
「よおし!出来た!」
フワリ、無邪気な笑みを浮かべれば。
赤の粉が外へと放たれ、
キラキラと光る赤は宙を漂う。
それがとても綺麗で全く気付かなかった。
「ほーれ。
着替えたんだし行きましょーかギランダちゃん。」
シリナスの光を見ること無く、着替えを済ませていた。
「うん!でも何処に行くの?」
目指す方向なんて自分の城にしかないくせに。
あの無垢な可愛らしい顔でトボケて首を傾げたギランダに少なからず目を細めてしまった。
「アヒャヒャ!確かに違えーねえなあ〜!」
ケラケラと軽い笑い声を上げたシリナスが追い討ちのように私の不信感を嘲笑っているようにも思えた。
木々の木漏れ日や澄んだ空気とは違い、
この二人といるのはとても重く、苦しいと感じる。
「名も無き少女よ。」
不意に私の後方から低い声が聞こえ、私はビクリと肩を揺らした。
「両国王が貴方をお待ちです。」
“あの人達”の香りが漂う背後の者は使い魔であろうか。
まるで三人一緒にいるような感覚に陥った私は使い魔だと分かっていても、
―――…振り返りたくない。
夢見心地にいたかった。