ヴェルセント(1)
ギランダとシリナス。
二人から少し視線を外し、湿り気のある土を見るも、
二人の違いすぎる色彩が私を見ているのが分かる。
強すぎる視線に何にか分からないが狼狽えてしまいそうになる。
まるで品定め。
私の全てを否定されてるような強過ぎる視線にどう口を開けば…。
正解の無い疑問を頭の中で巡らせ、だけど何処と無く漂う“あの人達”の香りが私に勇気をくれる。
そうだよ。
私は一人では存在(イ)られない。
『まずドチラへ?』
勇気なんて言葉の原動力だったり、理屈なんて分からない。
知らん顔出来たはずなのに今のはハッキリ勇気を振り絞った場面だと自分では思う。
「アルセントへ。」
アルセント?
伏せているアルセントの現国王の元へということは…
《―――…サラなら素直にくれてやる。》
いつも光を含み、キラキラとしたあの綺麗に澄んだ青の眼が初めて凍てついたあの時、そしてこの場所で。
私を見た彼に愛しさと、恋しさと声にならない悲鳴をあげたくなった。
彼の“自分の役目”をこなした時の背景は本当に悲惨な状態で。
私は顔を歪ませてしまい、見られたくなくて俯いてしまっていた。
《―――…待ってっからよ。》
それが最後の言葉。
それが最後の彼の後ろ姿。
それが最後の…―――。
「名も無き少女よ。」
――――――……プツリ。
後方からの使い魔の声で我に返った私は自然と視線が上がってしまい、
ギランダとシリナスを視界に入れてしまった。
「お二人と御一緒にいらして下さい。」
その言葉と共にブロンドに染まった私の髪が前へと靡く。
あの青と、
あの赤の。
キラキラ光る粉末を私に浴びさせるように風が吹いてきた。
『行かなくちゃ。』
ポツリ、呟いた私の独り言。
目の前に居る彼等に聞こえたかは定かじゃないが、
私は彼等に背を向け、再び歩みだした。
それに黙って付いて来る二つの足音。
静かすぎる旅の始まり。