ヴェルセント(1)
暫くの沈黙と共に歩みを進めてきたが、
1番最初にたどり着いたのがアルセントの領土で、
森から1番近い村だった。
『すっごーい!!』
そう叫んでしまった私はもう既に目を輝かせて村の中を散策していた。
昔、ココに訪れた時は食用目的で飼われている動物がアチコチ歩いていて、
田畑が綺麗に並んでは、近くに家が数件しかなかった。
「確かにすげえ場所だなあ~。」
シリナスはクツクツと喉を鳴らすながら笑い出した。
………私の左隣で。
それが不愉快。
『綺麗になったんだねー。』
シリナスへと視線を向けるも近すぎて、
身長差がある私からしたら見上げることになってしまった。
「綺麗か?」
『うん、とても。』
目を少し見開き、
私の言葉を聞くなりヘラリ、シリナスは笑って先にゆったりとしたテンポで1人歩いて行ってしまった。
気怠そうに歩く後ろ姿は親にソックリだわね。
そんな所は似たくせに、シリナスとその親の違いは明確。
シリナスの言葉遣いや動作には何故かゆっくりとした、でもそのせいで1つ1つの言動は丁寧に見える。
あとは独特なあの色気を含んだ雰囲気だったりなんだったり。
端整な顔立ちにその言動や雰囲気はマッチし過ぎる。
『てか、何処行くのよ。』
「宿でも探しに行ってくれたんじゃない?」
『………。』
いつの間に。
その言葉がピッタリ。
「ん?」
首を傾げるギランダは何故か私の右隣に居て、
全く気配を感じなかったから私は思わず瞬きをして彼を見た。
そして気付いた。
『え、ギランダってシリナスと身長そんな変わんない感じ?』
そう。
先程まで左隣にいたシリナスとそう変わらない角度でギランダを私は見上げている。
「僕だって男の子だよ~?当たり前じゃない。」
目を細めて柔らかく笑んできたギランダに思わず私は目を見開かせ、
『あははははっ!!!』
大爆笑した。
否、ギランダ君。
君は紛れもなくあの人の子だよ!
その柔らかな笑やら、物腰、雰囲気といい。
『おっかし~!!!』
シリナスよりもギランダに親近感が湧いてしまう。
「そんなに何が面白いの?」
笑みを保ちながら首を傾げたギランダ。
あの人も目元は綺麗に笑うけど、その奥で人をよく見据えていた。
『ごめんごめん、私の古い友…だち?』
思わず言葉に突っ掛ってしまった。
果たして友達なのだろうか?
私と“あの人達”の関係とはなんだったのだろうと、
不意に考え込んではギランダから顔を俯かせてしまった。
「…まあ、いっか。」
そんな私を見透かしたようなギランダの言葉が頭上から聞こえ、
それと同時に俯いた私の視線の先にあったギランダの赤茶の革靴がシリナスと同じ方向へと視界から消えていった。
あーあ。
本当、私ってばこんなんで2人とアルセントのお城まで無事当直できるのかな。
不安が募る一方だよ。