ヴェルセント(1)
『どうもこうも相変わらず、てとこだけど?
お宅の“ヴェルギニーの国”こそどうなんだー?』
ゆるり、口角を持ち上げ目の前の男。
否、そいつの“赤い眼”を見返してみた。
「その余裕ぶりは相変わらずなんだねー」
あんなに穏やかだった風がまるで嘘のように、
俺と目の前の男の間を突風として駆け抜けた。
あの深い“赤い眼”と同じ癖1つ無いストレートの赤髪が風と共にユラリ、揺れる。
暖かい日差しが目の前の男の赤を艶やかに輝かせた。
『おいおい!
“ヴェルギニー”の“ギランダ王子”は物事をちょいとハッキリ言い過ぎじゃねえーのー?』
ニヤリ、嫌味ったらしく目の前の男“ギランダ”に言葉を投げ掛けた。
“ヴェルギニー”とは、
この大陸上に2つある国のうちの1つ。
その“ヴェルギニー”の後継者は何を隠そう、
俺の目の前にいる“赤”の眼と髪を持つ“ギランダ”という男だ。
「はあ…。」
ギランダはそれはもう面倒そうにあからさまな溜め息をもらし、
俺から視線を反らし、
青々とした空を仰ぎだした。
ギランダとは全く違う色の青を見つめるも、
その“赤”は深過ぎんのか全く色を映しているように見えない。
なんなら本当に空を見てるのかさえ分からねえ。
「あのね“シリナス”僕は…」
サラリ、何の抵抗も無くギランダが俺の名を口にする。
か細く微かに震わしたギランダの声に、
―――――……俺の目元が微かに細まる。
コイツが分からねえ。