ヴェルセント(1)
……て、お互い様か。
きっとギランダからしたら俺が分からねえだろうし。
俺はギランダの話を流すようにテーブルの中央にある、
とりどりの味や型のクッキーを1つ摘まみ、
ヒョイ、と口内へ軽く投げ入れた。
「嫌な予感がするんだ。」
『………。』
クッキーを噛めば、
香ばしさと共にバターの風味が口いっぱいに広がった。
なんなら鼻から抜ける息も良い香りがする。
「シリナス?」
キョトンとした面持ちで首を右に傾げ、
先程まで空を仰いでたギランダの視線は俺の方に向いていて、
その深い“赤”に俺の姿を映しだしていた。
『ん〜?オメエ食わねえの?』
「…………。」
ヘラリ、俺はギランダに軽い笑みを浮かべ中央のクッキーの山を指差した。
「もう知らないからな」
面倒に思ったのか、
もしくは諦めたのか。
ギランダの気持ちなんか分からねえが、
手元荒くクッキーを摘まんでは、ヒョイと口内へ放り込んだ。
『なあギランダ〜?』
「…なんだよ。」
不機嫌丸出しの声で返してきたギランダを少し羨ましく思う俺がいるのが本音。
『オメエの嫌な予感ってただの予感かよ?』
なかなか癖になる旨さのクッキーを再び口にして、
俺はどうなんだよ、とギランダを促(ウナガ)してみた。
「最終的に聞いてくれるなら、最初からそうして欲しいんだけど?」
あの深い“赤”とは似つかわしい冷めた目で俺を見てきたギランダ。
やっぱり分からねえ。
つーか、色んな意味で腹が立つ。
人懐っこく感情豊かに見える雰囲気と言動。
理屈とかそう言った明白なものは無いが、
コイツの何かが俺に違和感を感じさせる。
『生け簀かねえなあ。』
俺がフッと嘲笑すれば、
「あんたもね。」
フワリ、柔らかく笑んできたギランダ。
俺が嫌がる言動を分かっててあえてしてくるギランダ。
オメエのそうゆうトコが生け簀かねえんだよ。