ヴェルセント(1)
ギランダの方へ再び視線を戻すも、
ギランダも困ったようなしかし驚いているのか、
元々、丸っこい目が更に大きくなっていた。
「ねえシリナス…?
僕ね…もしかしたら記憶を塗り替えられたのかもしれない。」
俺と目を合わせてきたギランダの声は微かに震えていた。
『ん〜?ギランダー俺もそうだと思ったんだよねえー』
カタン、ゆったりと腰を上げれば椅子とテーブルがぶつかる音がした。
『“誰が”何の“目的”で俺らを誘き寄せたかは知らねえけどよ?
だけども、だ。
そうとなりゃーやあ〜っぱり気持ちが悪ぃーもんだねえ』
食べたけどよー
ちゃっかり3つは食べちまったけどよー
すげえ旨かったけどよー
やっぱり“誰が”用意したかも分からないような飲食物も、
この空間も気持ち悪くなる。
なんなら気色悪ぃーとさえ思っちまう。
「早く出ようか…」
目を細めたギランダは頭上の青空を見上げた。
―――…が、もはや遅かったのかもしれない。
『「―――…っ?!」』
互いに声にもならず、息を呑んだ。
グラグラと強い地震のような揺れとともに、
あの青空に、
あの白い雲に、
あの綺麗な芝生に、
亀裂が入ってはパラパラと小粒ながらの石があたる。
俺とギランダは急ではあったが、そそくさとシェルターを作った。
水の膜で出来た俺のシェルターには崩れてゆく小粒の石が漂い始めた。
不意にギランダが居るであろう方へと顔を向けて、
『アヒャヒャッッ!
オメエ何遊んでんだよー』
思いっきり笑っちまった。
ギランダのシェルターは聞いたことしかねえから、
この目で見たのは初めてだった。
赤と橙の炎を纏い、
あちらこちらから舞い飛んでくる小粒の石をチリチリと燃やす。
「煩いよシリナス!」
膨れっ面になったギランダにますます笑いが止まらない。
燃やされた石たちは真っ赤に染まってギランダの足元に落ちては、
「熱っ!」
自分の足元や衣類を焦げ付かせていた。
『シェルターの意味ねえーじゃーん』
「まともに当たるより痛くない!……多分だけど。」
つま先立ちでピョコピョコと跳び跳ねるギランダの姿はもはや、
馬鹿げたお遊戯会を見ている様だ。