ヴェルセント(1)
燃え上がる炎の中に人が居る光景は珍し過ぎて笑える。
『オメエ熱くねえの?』
少しばかし気になった質問をギランダに投げ掛けるも、
彼から視線を外し、周りの状況を確かめる。
「シリナスこそ苦しくないのか不思議で仕方ないんだけどね」
見てるこっちが熱そうに見える状況だってえのによー。
よくもまあ冷めた声を出せるねえギランダちゃんよー。
「シリナス!!」
『ん〜?俺のシェルターに入りてえの?
ギランダちゃんカモーン』
慌てた声色で俺の名を呼ぶギランダにケタケタと笑いながらも、
自身のシェルターを操り、ギランダの全身を呑み込んだ。
ゴボゴボと息を出すギランダに異変を感じ、仕方なしに奴の顔面だけシェルターを外してやった。
「馬鹿っ!!殺す気か!!」
酸欠か、それとも怒鳴ったせいかは知らねえけど。
『アヒャヒャヒャヒャ!!顔面まで赤えーじゃねえか!』
思わず笑ってしまった。
今日はホント何て日だ。
敵国のギランダちゃんに笑わされっぱなしじゃねえか。
「まじで殺ってやろううかと思った」
丸っこい目元
血行が良さげな赤みのある唇
色の白さは女の子
そんなギランダは男の子に産まれるよりも、女の子として産まれた方が何かと楽だったんじゃねえかと思う。
『可愛いねえ』
そこらの女より可愛い。
「シリナス。」
けれど、やっぱりギランダも男なわけで、
先程から予想つかないぐらい随分と低い声で唸るように俺の名を呼んだ。
『俺の嫁に来ねえか?』
「シリナス貴様っ!!」
ケタケタと笑う俺に腹を立てたご様子のギランダ。
水で出来たシェルターを蒸発させる程に全身を炎上させ始めた。
コイツ“女の子”って言われんのが嫌なのか、なんて呑気に思っていれば。
ジュウゥゥ…━━━
『うっわ!馬鹿野郎っ!!
そんなに嫁が嫌なら俺が婿に行ってやろーか?』
何の躊躇いも無しに炎上したままギランダが俺のシェルターに侵入してきやがった。
無論、俺の全身を覆っていたシェルターは少しずつではあるが面積を狭まめ、視界が先程よりもクリアに映る。
『ギランダ!!
お遊びもそこまでだ!!』
クリアになった視界の先に広がっていたのは、俺がシェルター内で見ていた光景とは全く別のものだった。