12 love storys
個室になっている座敷の隅に
山下さん、課長、私と
並んで座っている。


他のみんなもそれぞれに
盛り上がっていて誰も私達の
険悪な空気に気づく事もなく……。


「課長……?
えっと、その俺、今、棚橋さんを
誘ったんですけど……あのぉ
課長がなんで断るんですか?」


















だよね。
山下さん、意味不明って顔してるじゃない。


て言うか、
課長、何言い出してるのよ。


私達の関係は秘密にしておこうって
言い出したのは課長なのに。


「課長、酔ってます?
山下さん、驚いているじゃないですか?
そうだ、山下さん、私、お盆は
おばあちゃんちに行く約束してたの
忘れてました。だから
ごめんなさーーー」


「葉月は黙ってなさい。」


課長がピシャリと言う。


「葉月?
葉月って棚橋さんのこと?
えっ、それって……ええっ
もしかして、課長と棚橋さん……
ええっ」


大きな声で叫びそうになる
山下さんにすかさず
課長が被せるように言う。


「山下くん、君はとても優秀だ。
僕が言わんとすること分かるよね?」


ただならぬ状況に
ただ、首を縦に振る山下さん。


「分かってるなら、良い。
後、念のため、言っておきますがーー」












耳元で何か言ったかと思うと
いつものあの絶対的な威圧感で


「宜しくどうぞ。」


そう言うと、また元の席に戻っていった。


もちろん、目は全く笑っていない。







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