12 love storys
「自分自身よりも
大切に思える存在でした 。」


ぽつり、ぽつりと
その人は話始めた。


長く付き合っていた人がいたこと。
将来を共にしようと思っていたこと。
その為に必要なお金を稼ぐため
無我夢中で働いていたこと。


気づいたら、
彼女の心は他の誰かの所へ
いってしまったこと。


「バカなんですよ、僕。
昔から一つの事に夢中になると
周りの事が見えなくなる。」


大都会でそれなりに大手の商社で
働いていたと言うその人は
彼女が去ってしまった後
全てを精算し、ここでこの店を
開いたと言う。


「ほんの2年前くらいの事ですけど
もう、随分と昔の事の様に思います。
夏の緑が、冬の白が
少しずつ僕の心を塗り替えてくれます。」


そう言うとその人は
また窓の外に目をやった。









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