12 love storys
「ったく……。バカだなぁ俺。
ごめんなぁ。お前を不安にさせて。」
「ううん。
ちゃんと理由分かったから
もう良いよ。
それより、大丈夫?花粉症は?」
山川が言うにはこうだった。
私達が誰もいないオフィスにて
キスをして間もなく
山川はある日突然に
花粉症になったと言うのだ。
人生初だと言う。
「俺だってどれだけお前に
キスしたかったか。
ここのところ、急に綺麗になってくし
唇だってぷっくりしてて可愛くて……
キスしてぇってどれだけ我慢してたか。」
「本当に?」
綺麗になぁれ大作戦
効果あったんだぁ。
「それにーーー
それ以上のことだって……考えてた。
そりゃぁ、俺も男だし……。
だけど兎に角、何をするにも
鼻は垂れるわ、くしゃみは出るわで
こんな風に一度もなったことねえから
キスするにも
どうしたら良いのか分かんなくて。」
「どうしたらって?」
「そりゃあ、お前さぁ。
キスしてる途中で鼻でも垂らしてみろよ。
一瞬で冷めちゃうだろ?
それにずっと鼻詰まった状態で
いつ、息すりゃいいんだよ?」
息?
鼻垂らす?
想像してみた。
「うん。確かに。
キスの途中で鼻垂らされたら
嫌だよ。」
「うっわ、お前、そこは嘘でも
そんなことないよ、とか
可愛く言えよ。
ったく、人の気もしらねぇでさ。」
「嘘よ。
そんなことで山川のこと
嫌いになったりしないよ。」
「本当か?」
「うん、本当だよ。
私、山川のことーーーーぅひゃっ」
山川にぎゅっと抱き締められた。
そして耳元で
「ーーーユウヒって呼べよ……」
囁かれた。
「いつまでも名字で呼び合うなんて
色気ねぇじゃん。
ミワ……好きだ……」
そう言うとまたゆっくりと
唇が重なった。
「っん、んもぅ……」
後頭部をガッシリと
山川の手によりロックされ
中々解放してくれない。
やっとのことで
「ねぇ……ご、飯は?」
と、聞くと
「食べるよ、もちろん。
だけどお前が先ーーーーー
ーーーックシュン。
ったく、なんなんだよぉ。
タイミング悪っ!」
「クスクスクス……ほら、キスは後!
折角、用意しているんだから
ちゃんと先にご飯食べてよね。」
「ぁぁああ~、ったく!
早く花粉の時期、終わってくれよぉ~」
あと少しで5月も終わる。
来月になれば梅雨に入り
花粉も治まってくれるよね。
梅雨時のどんよりとした
お天気は好きじゃなかったけど
今年は違う。
きっとーーー毎日
キスの雨がたくさん降るよね?
終