12 love storys
「ねぇ……もうすぐ夏休みだよ。
なんなら一緒に海でも行っちゃう?」


「無理。」


「えぇ~なんでぇ~。
来週とか海開きだしいいじゃん。
行こうよぉ~。
実は内緒にしてたけど、
新しいビキニ買ったんだよ。
見たいでしょ?行こうってばぁ。」


「行かない。
日焼けすると皮膚が痛くなる。
大体、お前のお子ちゃま体型で
ビキニとか見たいと思わねぇ。
そもそも、教え子とそんな場所に
行く気も更々ない。
つまらないこと言ってないで
早く問題を解いたらどうだ。
問4、まだ出来ないのかよ?」







はあ……。
何でこうもこの人は
淡白で真面目なんだろ。


教え子ったって
ただのご近所さんじゃない。


そう、今私の隣に座り
難しい顔をして
堅苦しい事を言うこの人
浅田 誠也(あさだ せいや)さんは
直ぐ近くに住む現役のT大生。


今年、大学受験を迎える私の
家庭教師なのだ。


と言っても、お互いの母親が
知り合いってことで
ただちょっと週に一回ほど
勉強を見て貰ってるって
だけなんだけどね。


これでも私は地元では
有名な進学校に通っていて、
それに塾だってちゃんと行ってるし
成績だって決して悪くはない。


だから本格的な受験戦争が
始まる前の今のうちに
息抜きでもってことで
海に誘ってるのにさぁ、
ほんっと、真面目って言うか
すっかり教師気取りで嫌になっちゃう。



















< 54 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop