12 love storys
「ぎゃっ!
ちょちょ、ちょっとー、何すんのよ。」


「スイマセン……。
でももう僕、行くところなくて
て言うか、お金もなにもかも無くて
お腹も空いてくるし、寒いし……
死にそうなんですっ!」


「死にそう……って。」


そんだけの勢いで喋れりゃ
到底、死にそうには見えないけど……。


「部屋、入れないの?
彼女どうしたのよ。
確か一緒に住んでなかったっけ?」


よく二人で買い物袋を下げて
歩いている姿を見ていた私は
当然、そう返した。


「……消えました。
何もかも持って……。」












「えっ?」


「どうぞ。」という彼の了解を得て
彼の部屋のドアを開け中を覗いて見ると
見事にスッカラカンだった。


「どういうこと?」


「だから消えたんです。」


「逃げられたんでしょ?」


「消えたんです。そうだっ!
きっと宇宙人に連れ去られたんだっ!
UFOに乗せられて遥か銀河系に
飛ばされたんだっ!
よぉーし、こうなったらその宇宙人を
僕が倒ーーーー」












「ねぇ……。現実見ようよ。」












「えっと……。逃げられました……。」


その場に力なく項垂れる男に
私は溜め息一つ吐くと
どうしたものかと頭を抱えた。

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