12 love storys
「いてててててて……。
真智子さん優しくしてよ。」


「バカねぇ……。
私、てっきり空手でも出来るのかと
思ったじゃない。」


「空手とか無理に決まってるじゃん。
僕、そもそも痛いの大の苦手だし……。」


ツンツルテン男を連れ部屋に戻った私は
赤く腫れた拳を冷やして
湿布を貼ってあげていた。


「にしても、随分と威勢いいこと
言ってたじゃない?
あっちが本当のあんたなの?
俺とか言っちゃって。」


「まさかっ。
演技だよ、全部、演技。
僕さぁ、これでも役者の卵だったんだよ。」


「えっ、そうなの?」


「そっ、と言っても子供の頃、少しね。
どうしても人前でお芝居するのが
恥ずかしくて辞めたけど……
もう、随分と昔の話だよ。」


「でも、その演技は良いとしても
何もこんなになるまで
すること無かったじゃない。
……その、助けてくれたのは
嬉しかったけど……。」


と、腫れた拳をそっと撫でながら呟く。


けれど何となく、照れ臭くて
手を離し救急箱を
片付けようとしたらーーー


「ヤだったんだよ。
真智子さんが……。」


「えっ、私がなに?」


私から目線を外し慎平が
ぽつりと言った。


聞き取れなくて聞き返すと


「他の男が真智子さんに触れているのが
イヤなんだっ!」


えっ……なに?
それって、もしかして……


「妬いてんの?」


「そう取るんならそれでいいよ。」


何故に若干、逆ギレなの?


「てゆーか、本当の事だし……。」


「本当って……?」


「だから……
真智子さんの体無しじゃ
生きていけくなってるんだけど……僕。」











ああ~なるほど。
太ももね。
太ももの事、言ってるんでしょ?
この太ももから離れられないってか……。


「あんたねぇ~」


と、手を振りかぶったら
ガシッと、簡単にその手を
取られてしまった。


「な、なによ……。」


顔の距離が近くてまともに
慎平の顔が見れない……。


「ねぇ……。
真智子さんも俺なしじゃ
生きていけない体になってよーーー」


そう言いながら唇を重ねてきた。


あまりの早業で
思わずビクッと体が反応すると


一瞬、顔を離して「可愛い。」
とか言うから
こっちはもう顔から火が出るくらい
恥ずかしくって……俯くと


ゆっくりとまた顔を上げられ
そっと優しく唇を重ねられた。


初めは触れては離れを繰り返し
どこか遠慮がちだったその行為は
段々と大胆に
私の口内を自在に味わい始めた。


今朝までただのエロホームレスとしてしか
見ていなかった慎平が
今、私の目の前で
あっという間に、ただの男にしか
見えなくなってきている。















「ん……ぃや……。」


「や、じゃないでしょ?
ここ?」


「あっ……そこは……ダ、メ……。」


「フッ、可愛い……真智子さん。
ここがいいんだ……。」


「あぁっ……。」


纏っていたものを全て脱ぎ捨て
私たちは互いの体を絡め合い
そして私はすっかり
ただの女になっていた。







< 76 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop