12 love storys
店を出ると


「行くぞ。」


と、言いながら村沢がさっさと歩いていく。


「ちょ、ちょ、ちょっと待ってって。」


と、追いかけるもーーー


なんで私が追いかけなきゃなのよ?


「村沢くん、気遣って貰ってありがとう。もう大丈夫だから、ここで……じゃっ!」


と、反対向いて歩いて行こうとしたら……


「お前さ、本当は帰る気ねぇだろ?」


と、相変わらずの仏頂面で言う。


「そ、そんなことないわよ。何だか飲まされちゃって、早く帰って休もうかなって。」


「ふうん。早く帰るヤツが男に電話してカラオケ予約入れとけだの車で迎えに来いだのーーー」


しまった。
さっき、店を出る前にアツキに電話してたの聞かれたんだ。


アツキとはつい最近知り合ったんだけど、お金持ちのボンボンだし、適当に貢がせておいて、もし体求めてきたら切っちゃえばいいかなって。


「立ち聞きしてたの?随分と趣味悪いことするのね。」


「耳障りな猫なで声で喋ってるから、嫌でも耳に入ってきた。」


み、み、耳障りぃぃ~っ?
腹立つぅ~。


だけど、気を取り直しここは冷静に対応しなきゃ。


「ありがとね、村沢くん。私の事を心配してくれてるのよね。…………嬉しいわ。」


と、最上級の笑顔を返す。











「それ、止めろよ。気持ち悪い。」










き、気持ち……悪い……って。
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