12 love storys
「これ、飲めよ。」


そう言いながら村沢が差し出したのは、私を公園のベンチに座らせ近くの自販機で出してきてくれたペットボトルに入ったホットミルクティだった。


「ありがと……。」


受け取った途端に、じわりと両手のひらに温かさが広がる。キャップを開け、ゆっくりと口を付ける。


一口飲むと、とても甘くて、その甘さと温かさは心まで染みていくようだった。


「ちょっとは、落ち着いてきたか?」


相変わらずのぶっきらぼうな言い種にも少しの優しさが含まれている事に漸く気づいてきた。


「うん。」


二人に会話はない。


笑顔もない。


だけど、不思議と心はとても穏やかだった。


不思議と穏やかだった。


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