12 love storys
「つ、疲れたぁ~。」


並みならぬ緊張感から漸く解放され
暫し、急騰室へと逃げ込む。


すると、私の後に続けて
入ってくる人物がーーー


「孝介さんっ!」


課長が何故か狭い急騰室へと
入ってきた。


「棚橋さん、会社では課長と呼びなさい。」


そうだった。
課長は公私混同は絶対嫌な人だった。
ここは部下としてちゃんと
対応しなければ……。


「す、すいません……課長。
あの、何かご用ですか?
お茶なら、入れましょうか?」


するとーーー


「ちょっと、糖分をね、補給しようかと。
部下のケアレスミスで
少し疲れたようなので……。」


そう言ってニヤリとしながら
徐々に私を壁面へと押しやる課長。


「か、課長……?」


背中が壁にピッタリとくっついて
これ以上、もう下がれない。


「いただきます……」


そう言うと、課長は腕を私の顔の横につけ
そのまま唇を重ねてきた。


「んっ……。」


こんなところで……
誰かにみつかったら……。


けれど唇は直ぐに離れた。


「課長!こんなところで
ダメじゃないですか。
誰かに見つかったら
どうするつもりなんですか?」


私達の関係は誰も知らなくて
秘密にしているというのに。


唇が離れた途端、私が訴えると


「葉月が悪い。」


と、ご機嫌頗る悪く課長が言う。


「えっ、な、なんで、私が?」


しかも課長、葉月とかって呼んでるし。
どうしちゃったの?


すると、不貞腐れ顔の課長が言った。


「さっきの書類の訂正
分からないところ山下に聞いてましたね?」


山下さんと言うのは
同じ課にいる私より一個上の先輩だ。


山下さんも社内では非常に
イケメンの部類に入っていて
何より課長よりもずっと愛想が良い。


「えっ、ただ確認しただけです。
それだけですよ。」


「ふん、確認なら僕に聞けば良いものを……。
それに必要以上にくっつきすぎです。
まぁ、いいでしょ。諸々含めて
今晩、お仕置き決定だな。」


満足げにそう言うと課長は
先に急騰室へから出ていった。












はぁ?
なに?
めちゃ、勝手な事、言ってない?


公私混同はするなとか
言っちゃってる癖に
めちゃくちゃ混同しちゃってるじゃない。


しかも……お仕置きぃ~


恋人として付き合うまで
課長がこんなにも、嫉妬深くて
大人げない人だと思わなかったよ。


おまけに超S体質だし……。
お仕置きって……。


ブルッ。


私は急騰室で一人
深い深いため息を吐いた。




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