上司のヒミツと私のウソ
第4章 天敵 Pick a fight
なんだか妙なことになってきたな、とおもう。
「西森さん、『銀生』の冬のキャンペーンで使ったノベルティ、まだ余ってたっけ?」
執務室にもどってくるなり、佐野くんが一直線に私の席にやってくる。佐野くんは同じ宣伝企画課のメンバーで、二十九歳。
「余ってますよ。五百個ほど」
「倉庫探しまくったけど見あたらない」
「ちょっと待ってくださいね」
私はパソコンを操作して開いていた作業中のファイルを閉じ、席を立つ。足早に倉庫に向かう私のあとから、佐野くんが申し訳なさそうについてくる。
倉庫に入ると、側面に「銀生ノベルティ」とフェルトペンで走り書きされた段ボール箱が棚の下段に収まっているのを指さし、
「ほら、ここにあります」
「あー。本当だ。すみません」
小さくなって謝る佐野くんを倉庫に残し、一人で執務室に引き返す。
「あっ、西森さん」
席に着くなり、今度は隣の席の三好くんに声をかけられる。