上司のヒミツと私のウソ
「ここ数年、お茶やミネラルウォーターなどの主要飲料の生産量が減少傾向にある中で、唯一プラス成長を続けているのが紅茶飲料です。理由は飲用シーンの拡大や消費者動向の変化などがあげられますが、それについては企画書の添付資料を読んでおいてください」
一時間後の打ち合わせまでに、といって、矢神は資料を手渡す。私は見慣れない単語や数字が並ぶ資料をめくりながら、うなずいた。
「これを好機と見た飲料メーカー各社は、こぞって紅茶飲料を強化しています。そこで、当社でも新ブランドを立ち上げることに決まったのですが」
矢神は一瞬いいよどみ、「少し難航している状態です」と続けた。どういう理由で難航しているのかは話してくれなかった。打ち合わせの時間がせまっていたので、そのあと私はすぐに自席にもどって資料を読むことに集中した。
私自身は、この企画を考えるときに特定の商品を念頭に置いていたわけじゃない。というのも、広報誌の募集要項には「二十代から三十代の女性をターゲットにした紅茶飲料の宣伝企画」と書かれていただけだったので、自分の好きなロイヤルミルクティーをイメージして作ったのだ。
まさか新ブランドの展開に採用されるとはおもってもみなかった。
本間課長は、黙って矢神の説明を聞いている。ふだんはよく笑っている人だが、黙っていると広い肩幅や骨張った厳つい顔立ちが強調されて少し怖い。
一時間後の打ち合わせまでに、といって、矢神は資料を手渡す。私は見慣れない単語や数字が並ぶ資料をめくりながら、うなずいた。
「これを好機と見た飲料メーカー各社は、こぞって紅茶飲料を強化しています。そこで、当社でも新ブランドを立ち上げることに決まったのですが」
矢神は一瞬いいよどみ、「少し難航している状態です」と続けた。どういう理由で難航しているのかは話してくれなかった。打ち合わせの時間がせまっていたので、そのあと私はすぐに自席にもどって資料を読むことに集中した。
私自身は、この企画を考えるときに特定の商品を念頭に置いていたわけじゃない。というのも、広報誌の募集要項には「二十代から三十代の女性をターゲットにした紅茶飲料の宣伝企画」と書かれていただけだったので、自分の好きなロイヤルミルクティーをイメージして作ったのだ。
まさか新ブランドの展開に採用されるとはおもってもみなかった。
本間課長は、黙って矢神の説明を聞いている。ふだんはよく笑っている人だが、黙っていると広い肩幅や骨張った厳つい顔立ちが強調されて少し怖い。