上司のヒミツと私のウソ


「どうだった? 開発との打ち合わせ」

 矢神が外出するのを待って、安田が小声で聞いてきた。


「どうって……。まあ、なんというか」

 私が返答に窮していると、安田は予想していたように「やっぱり決裂したか」と納得顔になっていう。

「あの二人が組むと、たいていうまくいかないんだよねー」

「そうなの?」

「お互いに相手の意見を認めようとしないでしょ」

「うん。子供の喧嘩みたいだった」

 安田は呆れたように肩をすくめた。が、顔は笑っている。


「今回は谷部長の策略だね」

「策略?」


「矢神課長は、フレーバーティーの企画にはずっと反対してたんだよ。だから宣伝担当は佐野くんがやることになってたんだけどね」

 初耳だった。
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