上司のヒミツと私のウソ
 だって。

 言葉を探しても出てこない。この気持ちを表す言葉が見つからない。


 まさか。誤解だよ。そんなわけないでしょ。もうとっくに終わってるし。ちゃんと整理できてる。そんなんじゃない。あんなやつ大嫌い。肺ガンになって死んじゃえばいい。


 どれもこれも、違う。


「そろそろ行こっか」

 腕時計を見て、安田が立ち上がった。


 いや、だから。待ってよ、いま探してるし。


 安田が降り注ぐ陽射しの中に出て、ぎゅうっと大きく背伸びをした。私はのろのろと腰を上げ、安田のあとに続く。


 見つからないってことは──。


 つまり、そういうこと……ですか?
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