上司のヒミツと私のウソ
私は階段を使って六階まで上がった。
執務室の扉は開いていた。蛍光灯が一部分だけ点いている。
その下のデスクに矢神がいて、パソコンのモニターを見つめていた。矢神のほかは誰もいなかった。
顔を上げて私が入ってきたことに気づくと、矢神はうろたえたように目を見開いて「どうしたんだ」といった。
私は笑いながら自分のデスクにバッグを置き、パソコンの電源を入れた。動き出すモーターの音が静かな部屋の中に響く。
「私も仕事が溜まってるんです」
席についてフォルダの書類を確認し始めた私を、矢神はしばらく訝しげに見ていたけれど、やがて仕事を再開した。
席を立ち、私の後ろにあるコピー機を操作して書類の印刷を始める。
ふいにシトラスの香りに包まれる。
コピー機の内部が音をたてて回転し始めた。
つぎつぎと紙が吐き出される音を背中で聞きながら、私はシトラスの香りを追い払うように立ち上がった。
執務室の扉は開いていた。蛍光灯が一部分だけ点いている。
その下のデスクに矢神がいて、パソコンのモニターを見つめていた。矢神のほかは誰もいなかった。
顔を上げて私が入ってきたことに気づくと、矢神はうろたえたように目を見開いて「どうしたんだ」といった。
私は笑いながら自分のデスクにバッグを置き、パソコンの電源を入れた。動き出すモーターの音が静かな部屋の中に響く。
「私も仕事が溜まってるんです」
席についてフォルダの書類を確認し始めた私を、矢神はしばらく訝しげに見ていたけれど、やがて仕事を再開した。
席を立ち、私の後ろにあるコピー機を操作して書類の印刷を始める。
ふいにシトラスの香りに包まれる。
コピー機の内部が音をたてて回転し始めた。
つぎつぎと紙が吐き出される音を背中で聞きながら、私はシトラスの香りを追い払うように立ち上がった。